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同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録 [ノンフィクション]

飛鳥会事件の被告である同和団体幹部小西邦彦と、
三和銀行の取引先課長であった岡野義市。
岡野は誰からも怖れられていた小西の担当となり、その懐に潜り込む。
不正融資、癒着、不動産取引、企業用心棒、利権、地上げ、
アンダーグラウンドな取引は高度経済成長、バブル景気とともに拡大するが、
やがて終焉を迎えるのだった。

小西も岡野も
第7章に出てくる「バブルの女帝、謎の料亭女将」尾上縫も貧しい家の出身。
日本全体が貧しかった戦後の中でも、とりわけ彼らはハングリーだったのだと思う。

岡野が三和銀行に入行したころは銀行が業務拡大している頃で、
成績の良い者は学歴に関係なく出世できた。
いわゆる「高卒支店長」も珍しくなかったのだ。
岡野は大卒の連中のほうが、ハングリーさに欠けていたと述懐している。
小西は暴力団から部落解放同盟支部長に。
同和利権を貪り、のし上がっていく。
また芸能界にも顔が利き、解放会館にお笑い芸人たちを読んだり、
芸能人の結婚式に出席したりと、大物ぶりが目立つ。
銀行との取引には関心が無かったが、岡野からいろいろ教えてもらい、
のめりこむようになる。
高度経済成長とバブル景気には誰もが巨万の富を掴むチャンスがあったのではないだろうか。
そして、バブル崩壊後、やりすぎた連中が粛清されていった。
小西は銀行を上手く使っていたつもりが、
結局、銀行も小西を利用して、用済みになったら捨ててしまう。
手のひら返しである。
最後に老いて、寂しく死んでいく小西の姿は哀れだ。
まさしく盛者必衰である。

岡野も「銀行から利用された」のだが、 それは彼にとって最大の賛辞だ。
会社のために顧客のために体を張ることが、
立派なサラリーマンだった時代の名残なのだろう。
また、そうすることによって会社も大きくなり、給料も上がり、
自分も成長できた(と思い込めた)のだ。
岡野は、当時ノイローゼになりながらも、
気難しい小西に入り込めた瞬間を今でも覚えており、
それを誇りにしているのだ。
このことは顧客を持つ会社員ならば共感できる価値観かもしれない。、
ただ今はそんなことを引き摺る間もないほどのスピードで世の中は動いている。
岡野は上手く勝ち逃げできたということだろうか。



同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録 (現代プレミアブック)

同和と銀行 三菱東京UFJ“汚れ役”の黒い回顧録 (現代プレミアブック)

  • 作者: 森 功
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2009/09/04
  • メディア: 単行本



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コメント 1

上田

岡野さんは今どうされてますか?
小西さんのお墓はどこにありますか?


by 上田 (2020-04-13 16:35) 

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