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安倍三代 [ノンフィクション]

安倍晋三首相の母方の祖父・岸信介への傾倒は有名だが、
父方の祖父・安倍寛について語ることはほとんどない。
安倍寛は太平洋戦争中、翼賛選挙、戦時体制に抗った反骨者であり、
その人柄から地元民の尊敬を集めていた。

寛の息子、晋三の父親である安倍晋太郎は新聞記者出身で
バランスの取れた政治家であった。
二世議員だが自らの力で票田を開拓した。
亡き母や異父弟を巡るエピソードに親しみやすい人間味を感じる。

晋三の育ちは裕福そのもので、小学校から大学まで成蹊で育ち、
受験やスポーツでの競争にも参加せず、
のんびりと目立たない人生を送っていた。
同級生たちは政治や社会問題について彼と話した記憶はないという。
政略入社した会社でも「いい子」であり、如才なく振る舞っていた。
そんな彼だが政界入り後に豹変する。

晋三は政治家でなければ映画監督になりたかったという。
彼は「日本の総理大臣」という役割を演じているのでは、
という夫人の指摘は鋭い。
政権にどことなく漂う空虚感の根拠にもなっているのだろう。

増殖する世襲議員の究極形である現政権。
そのルーツが垣間見える力作だった。


安倍三代

安倍三代

  • 作者: 青木理
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2017/01/20
  • メディア: 単行本



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