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死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 [ノンフィクション]

2005年、大阪で姉妹刺殺事件を犯した山地悠紀夫。
彼はその5年前、母親を殺害し、少年院へと収監されていた。
山地はどのような人物だったのか。
過酷な生い立ち、アルコール依存症で暴れる父親、ネグレクト気味の母親、
借金に追われる母子家庭、いじめ、不登校、広汎性発達障害、
規則正しい生活に馴染めた少年院、
そこを出た後は過去を知られ店を転々とし、最後はゴト師に。

転がり落ちる人生「私は生まれてくるべきではなかった」という発言は
読んでいるものを切なくさせる。
犯した罪は許されるものではないが、
どこかで救いの手があったならばと思ってしまうだろう。
発達障害が認知され始めた頃に出版されたため、
そのことに関する記述は多い。
ただし山地に関しては成育歴や環境が苛酷なため、
何らかの犯罪に巻き込まれた可能性は高いだろう。

広汎性発達障害で犯罪を犯してしまった人に対しては
「反省」を求めるのではなく、
「再犯防止」に力を入れるべきというところに説得力があった。
日本の司法は「罪への反省」ありきだが、
そういう思考になれない人たちがいることを
知る必要があるのだろう。

貧困と暴力、不景気といった時代背景についても、
いろいろ考えさせられる本だった。


死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 (新潮文庫)

死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人 (新潮文庫)

  • 作者: 池谷 孝司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2013/04/27
  • メディア: 文庫



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